東京都知事賞

「筋目文丸釜」 鈴木盛久(金工)

この度は改元の年の第一回目の会で、すばらしい賞をいただきましてありがとうございます。これまでささえてくれた家族、工房の皆、又お世話になりました方々に感謝の気持ちで一杯です。
いくつになりましても賞をいただける事は大変嬉しい事です。体力、視力の低下を感じている時に、もう少し頑張るようにと背中を押していただいたような気持ちです。
これまでは、細い線を用いた文様の作品を多く作ってまいりましたが、今回は、その線に幅をもたせ、立体感又リズムを感じられるように表現したいと思いました。
寸法、季節感等、様々な制約のある茶の湯釜にいかにして自分らしい個性を加える事ができるかと、模索しながら制作してまいりました。これからも日々精進して参りますので、ご指導の程、よろしくお願い申し上げます。

鈴木盛久

北海道知事賞

木芯桐塑木目込「以心伝心」  宍戸 孝子(人形)

この度第59回東日本伝統工芸展におきまして北海道知事賞をいただく事になりました事、心よりお礼申し上げます。今年の開催は札幌巡回展と同会期で札幌三越も約10年ぶりに開催されます。そんな中での北海道支持賞の受賞は札幌在住の私にとりましてはこの上なく幸せな事と深くかみしめております。
受賞させていただいたのは「以心伝心」という題名の鷹匠の作品です。数年以上前ですが日本の伝統文化である鷹匠のパフォーマンスを拝見する機会が有りそれ以来その感動が脳裏から消えること無く過ごしてまいりました。人と鷹との成せる技は双方が信頼し合い深い絆が有ってこそなのだ、とも感じました。そんな関係が人形をご覧になった方に感じていただけましたらこの上なく幸いに存じます。
最後になりましたがこのような大きな賞をいただいたことを重く受け止め今後も今まで以上に努力精進してまいりたいと思います。皆様ご指導の程よろしくお願いいたします。

宍戸 孝子

朝日新聞社賞

彩変化盛籃「天の橋」 藤塚 松星(木竹工)

この度はこのような賞を頂き、誠にありがとうございました。心より御礼申し上げます。
ここ数年、連続して「彩変化」と言う同じ技法を用いた作品を制作してきました。
一つの技を極めるには繰り返し試みることは必要ですが、反面、マンネリ、自己模倣に陥る危険もはらんでいます。
ですから私は、選外になるリスクを覚悟のうえで、その都度、新しい造形、面白い形を求めて制作をしてきました。
今回の「天の橋」もそのような気持ちで取り組んだものです。
その作品をこのように評価して頂いきましたこと、大変嬉しく思うと同時に、次なる制作への大いなる励みとなります。
本当にありがとうございました。

藤塚松星

岩手県知事賞

モザイク硝子兜鉢「回雪」    鍋田 尚男(諸工芸)

この度は栄えある賞を頂き誠にありがとうございます。
今回の作品は渓流の冬の景色、薄い氷が張りその上を雪がうっすらと積もった水際の美しさを表現いたしました。
今後も受賞の喜びを励みにして少しでも前に進める様制作活動をしていきたいと思っております。

鍋田尚男

日本工芸会賞

 江戸小紋着尺「矢鱈縞」      菊池宏美(染織)

この度は日本工芸会賞を頂き誠にありがとうございます。
江戸小紋の道に入るきっかけは師匠である藍田正雄氏の縞の着物に出会った事でした。数ある江戸小紋の柄の中で、縞柄は凜とした中にも粋が感じられ、その上で染めによる柔らかさが生じます。又、型付けの作業も独特な緊張感があります、そこには卓越した古人の彫り師との対話があるようです。
今回染めました「矢鱈縞」は太さ、間隔の異なる縞がアットランダムに文字通り”やたら”に並んでいますが、そこには考え抜かれたバランスがあります。この縞の特徴を生かすべく透明感の出る色を狙って染め上げました。今回自分の原点でもある縞柄で賞を頂けました事は今後の大きな励みとなります。
最後になりましたがお世話になっております諸先生、諸先輩に熱く御礼申しあげます、今後とも御指導のほどよろしくお願い申しあげます。

菊池宏美

 


根津美術館館長賞

釉描彩雪笹文陶筥     井口 雅代(陶芸)

この度は、思いがけず根津美術館館長賞戴きまして誠にありがとうございました。これまでご指導頂きました諸先生方や作陶を支えてくださった多くの方々に深く感謝申し上げます。
今回の作品は、釉薬の呈色を春らしくする為に磁土を使い、融けてゆく雪の曲線を表現したく、タタラを組み合わせて造りました。異なる釉薬を幾層か重ねて、深みや奥行のある表現を目指し制作してまいりましたが、試行錯誤の連続でした。窯の焚き方は勿論、重ねる釉薬の厚さのコントロール、素地と釉薬との膨張を揃えること等、未だ問題は山積みしていますが、この受賞を励みに少しずつクリアし精進してまいりたいと思います。そしてこの作品を見てくださった皆様が、春の訪れを少しでも感じてくだされば嬉しく思います。ありがとうございました。

井口 雅代

MOA美術館賞

氷青釉蓋器「氷の海」 冨川 秋子(陶芸)

私が初めて東日本伝統工芸展を観たのは、第四十六回展でした。気品溢れる美しさと高度で細やかな技術に圧倒されると共に、深く感動した事を今でも鮮明に記憶しています。
そしてこの度、素晴らしい賞を賜れました事に大変驚き、これまで御指導頂けました師匠、先生方、多くの皆様方のお顔が浮かび感謝と共に嬉しく有難く思いました。
幼い頃から、美しさに焦がれてきた南極の氷。その青く澄んだ色を釉薬に、涼やかに透き通る空気を磁肌の白で表現したく、日々制作しております。今回の作品は、南極の海に浮かぶ氷山の情景を投影したく制作致しました。
まだまだ未熟者ではございますが、これからも心象を表現し、より良い作品を手掛けられるよう研鑽を積んで参りたく思います。
誠に有難うございました。
 

冨川 秋子

三越伊勢丹賞

 籃胎蒟醬短冊箱「歳寒松柏」  神垣 夏子(漆芸)

この度は三越伊勢丹賞を賜り誠にありがとうございました。
今回の制作は、基礎に立ち返る部分と新たな試みの両極に意識致しました。表面の加飾は蒟醬(きんま)の基本である線彫りを中心に別々の模様を重ねた際の効果に期待し、また内側の籃胎(らんたい)の表現も和紙肌にしてツヤを消した、落ちついた風合いへの挑戦でした。
ものを作る様になってから自然へ目を向ける事が多くなり、冬の極寒の中の松葉の緑から強さと健気さを感じました。
この受賞を励みに今後も精進してまいります。ありがとうございました。

神垣夏子

川徳賞

乾漆切絵筥「蓮華つつじ」    根本 曠子(漆芸)

蓮華つつじは爽やかな初夏の高原に群生する、オレンジに近い朱色の花です。漆の朱色は中国漢時代からの優れた顔料ですが、未だに乾燥時間や温・湿度の調整が難しく、真冬の制作時期に思う色が出るまで、顔料と漆の調整を工夫しました。
和紙に糊漆をひいて型紙を造り、文様を切透かして筥に貼る技法は、若い頃に染色の型紙からヒントを得て、苦肉の策で思いつきました。最初は紙も分厚く、試行錯誤を重ね、現在の土佐典具帖紙(無形文化財に指定されている極薄の楮和紙)に辿りつくまでには数十年を要しました。
 紙は比較的扱い易い素材ですが、塗面の強度や肌合い、艶加減など、奥が深く興味が尽きません。
乾漆の素地は石膏のブロックを筥の形体に削り出し、数枚の麻を貼りこみ充分に乾燥硬化させて離形とするには数か月かかります。この間に図案やテストピースや試作の手板を造りますが、本作の制作に取り掛る前の助走は一番楽しい時期です。
昨年80歳を迎え、今回の賞はまた新たな励みとなりました。
 

根本 曠子

日本工芸会東日本支部賞

七宝水指「東雲」     新名 武彦(諸工芸)

私は四国高松で芸大受験のため上京浪人生活の際、アルバイトで七宝メーカーと巡り合い、そのまま居座り七宝職人となりましたが、社命で名古屋の安藤七宝で修業、故早川義一翁から有線七宝の技を伝授、その後約四十年間七宝商品の製造に携わりました。
当時から伝統工芸展には憧れがありいつか出品作品が出来ればと考えておりました。この栄えある伝統工芸展でこんなに大きな賞を頂くとは夢にも考えておりませんでした。退職後工芸会の仲間入りをさせて頂きこれまで毎年入選出来ることを目標として今日までやって来ました。
本当に夢のようです。あらためて今後この賞に恥ない作品が出来るかどうか身の引き締まる思いです。
当作品の発想は私の健康維持のため毎朝夜明け前八王子郊外の川沿いを歩いておりますが前々から明けゆく東の空の美しさに魅了されいつかこれを作品に出来たらと考えておりました。それが何と成就されこれまで七宝をつづけていて本当に良かったと思います。
 

新名武彦

奨励賞

紅白鮮水影-1902-   増原 嘉央理(陶芸)

この度は思いも寄らず賞を頂きまして誠に有難うございます。
これもひとえにご指導、ご鞭撻を賜りました諸先生方のおかげと心より感謝申し上げます。
此度の作品は在学中から制作を続けている作品であり、自身の作品群の中でも長く続けてきた作品の一つです。
迷い、悩みつつも細々と続けてきた作品がこのような賞を賜りまし
た事は制作への何よりの励みとなりました。
今後もこの受賞を励みになお一層精進して参りたいと存じます。
今後とも変わらぬご指導ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。
ありがとうございました。

増原嘉央理

奨励賞

米澤絽袴地「瑞光」   新田 源太郎(染織)

このたびは、奨励賞を頂きまして誠にありがとうございました。今回の作品は、「瑞光」。穏やかな朝陽の輝きが青々とした新緑を照らし、清々しい朝を迎える。そのようなイメージから制作いたしました。表現として、縞の中に多くの色を使用したことで一定に見えず光の変化を出し、絽という組織で織り上げ透け感を出しました。
今後もこの受賞を励みに、ものづくりに精進して参りたいと思います。心より感謝申し上げます。

新田源太郎

奨励賞

 色貝蒔絵四方盆「檸檬」      松崎 森平(漆芸

この度は素晴らしい賞をいただき、本当にありがとうございました。
今春に一念発起し、漆工芸作家として独立するタイミングでの受賞のお知らせは、驚きとともに、「頑張れよ」と背中を押していただいている気がしてなりません。思い返せば自身の公募展初入選もこの東日本伝統工芸展であり、いつも自身の大切な瞬間に、この展覧会があるなあとしみじみ思います。
今回の作品は、小説で読んだ檸檬のように、日常に出会う驚きや新鮮さを表現したく制作しました。鮮やかな黄色い果実やそのフォルムの良さを引き出せるように、スケッチを重ねました。用いた技法は薄い螺鈿の裏側から着色する伏彩色(裏彩色)で、色漆のほか、鮮やかな色彩を求めて天然樹脂なども用いて金銀粉を蒔きつけております。まだ試行錯誤の段階ではありますが、チャレンジする姿勢を評価いただけたのであれば、作り手として大変光栄です。
 

松崎 森平 

奨励賞

象嵌鉄線文銅箱       川合 里奈(金工)

この度は思いがけなく奨励賞を頂きまして、ありがとうございました。今までご指導、ご鞭撻を賜りました先生方や支えてくださった皆様に、心より感謝申し上げます。
今回の作品は銅板で箱を制作し、その上に布目象嵌と線象嵌の技法を用いて、鉄線を表現しました。
色として使える金属や箔の種類が限られる中、純金に銀を足すとグラデーションになっていく箔の色の違いを利用し、花びらと葉の表と裏で色を変え、立体感が出るように表現してみました。
花びらと葉の裏に使用した十八金は硬く、銅の素地に布目象嵌で嵌めるのは難しかったのですが、試行錯誤の末、工夫して嵌めることができました。
今回の受賞を励みに、これからも日々精進して参りたいと思います。

川合 里奈

奨励賞

盛籃「架橋」  本田 青海(木竹工)

この度は奨励賞をいただき誠にありがとうございます。
新しい元号に変わるという特別な時をテーマに何か作品で残せないかと思い制作しました。
全体の形は新潟と地元の佐渡の架け橋である船の形を表現し、手の部分は平成から次の明るい時代へ繋ぐ橋としての意味を込めて制作しました。
いま自分がたくさんの方に支えられてこの竹の仕事ができていることに感謝し、いずれ次の時代への橋渡しをする役目になれればと思います。
今回の賞を励みに、より多くの人に竹の魅力を伝えられるような作品を制作していきたいと思います。

本田 青海

奨励賞

銀彩被硝子桜蘭文花器       降籏 ゆみ(諸工芸

この度は思いがけず奨励賞にお選びいただき、心よりお礼申し上げます。
昨年北海道を襲った地震は、当たり前に思っていた日常の有り難さと、ものづくりのできる喜びを再認識する出来事となりました。改めて感じる周りの自然の素晴らしさや、花々の愛おしさが今回の作品制作を後押ししてくれたのだと思います。
今まで色被の硝子にグラヴィールで模様を彫る仕事を主にして参りましたが、今回はここ数年試みてきた、銀彩を筆で描くという工程を加え、深みのある仕上がりを目指しました。まだ試行錯誤の段階ですが、これからの新しい表現に生かしていければと考えております。グラヴィールの技術向上と筆で描く楽しさを重ねながら「今出来ることを頑張りなさい。」と励ましていただいた言葉を拠に、これからも精進してまいります。
今後ともご指導の程、よろしくお願い申し上げます。

降籏ゆみ

奨励賞

木彫布紙貼「蒼いとき」      中田勝子(人形)

この度は奨励賞をいただきまして、誠にありがとうございます。思いがけない受賞に驚きとともに、大変うれしく思っております。
アクセサリーでもと思って始めた七宝でしたが、素晴らしい先生に出会い、御指導いただくなかで、すっかり魅了されてしまいました。
今回の作品は、旅先で見た山々のなだらかに伸びる稜線や重なり合う稜線の雄大さと美しさに感動し、それをモチーフに制作いたしました。
毎回のことですが、制作にあたっては、形、デザイン、色で悩み、焼成で思いがけないトラブルにあうこともあります。
まだまだ技術的にも未熟で、課題の残る作品が多々あります。
この度の受賞を励みに一層努力してまいりたいと思います。
今後とも御指導下さいますようよろしくお願い申し上げます。
ありがとうございました。

中田勝子