初入選

色絵菱文大鉢」 内山 みどり
(陶芸)

この作品は、菱形を基本に器の内から広がっていくイメージで幾何学文様を構成していきました。
磁土の冷たい質感に線と線を繋げ、淡い色を重ね焼きつけて彩り、異なった菱形文様のパターンを連続させて広げる、器の中で一つの無限の世界の空間を感じます。
線の細さや、色の濃淡、組み合わせはまだまだ無限です。
これからもこの作業に魅了され、展開し続けていきたいと思います。
 

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初入選

赤絵菊華紋陶筥大杉 幸代
(陶芸)

高貴、高尚などの花言葉を持ち、国の象徴花とも言え古来より装飾に用いられてきた、菊華紋。
赤絵細描の技量を問われる小紋柄、その伝統的な双方を用いて、いかに現代(今)に生かせるモノ(作品)に仕上げる事が出来るのか、を念頭に置いた作品です。
あえて正面をはっきりさせる事無く、菊華紋にさまざまな表情を付け、360°景色を楽しめる様にしました。
単調になりやすい小紋柄の上に、マスキングテープを用いて「フリ」技法でリズム感を出しました。
十二角の切り立った形状に加え、さらに直線を強調する事でモダンさを表現しました。
この辺りをご覧いただけますと幸いです。
完成時の安堵と作品への愛おしさは最大級でした。
これからも、躍動感のある赤絵作品を目指し、一筆一筆手を抜く事なく、心を込めて精進致します。
 
 

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初入選

彩泥花器川口 由美子
(陶芸)

この作品への想いは、かつてよく飛行機に乗っていた頃の夕暮れの情景です。遥か彼方の地平線まで続く白い雲海は、夜のとばりが下りはじめると、ゆっくりと闇が広がり、やがて光が消えると満天の輝く星空に包まれていく様子を今でも鮮明に覚えています。そのさまを作品に表してみたいと思って作ってみました。シンプルなアウトラインのなかに現代性を感じられるような形を求めて工夫してみました。色彩も形に呼応するよう、おさえられた色で表してみました。技法は、生の状態の時に細いテープを張って、テープとテープの間を、白からだんだんと暗くなるグラデーションの化粧土を塗り、その後素焼きして、透明な釉薬をかけて本焼きをしました。高貴、高尚などの花言葉を持ち、国の象徴花とも言え古来より装飾に用いられてきた、菊華紋。
 
 

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初入選

紬織着物「空・海」西橋 はる美
(染織)

臭木の実で染めた青は空色。藍の生葉で染めた青は水色-と、山崎青樹氏が書いておられました。
毎年十月に何日もかけて臭木のみを採取し、糸染めしておきます。絣は十字絣を基調にして、藍で肩から裾にかけて変化させ、地色に臭木の空色を使って空と海を表現したいと考えました。
全体のデザイン画を何枚か書く内に斜線が欲しくなり、十字の数も減らしてみました。菱形の部分を緯絣の本数で変化、斜線も絣で浮くようにしてみました。この絣づくりに時間がかかりました。
日々、空も海も呼応しつつ変わり、佐渡の海が持つ厳しさも出せたらと思い織り上げました。
苦労した分、初入選につながり本当に幸いです。
 
 
 

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初入選

精好仙台平袴地「曙光」甲田 悟子
(染織)

霧に包まれた森の木々に朝日が差し込み、刻々と表情を変えていく様を袴地に表現しました。
自分で決めたテーマを色や柄に表現する意匠設計。仙台平の特徴である縦に柔らかく横に張りのある織り風合。そして袴地としての気品。それらすべてを調和させるために、生糸の選別、精練、染色から織りに至るまで一年近く試行錯誤を繰り返し、技術の難しさを感じました。
制作にあたっては、重要無形文化財保持者である父甲田綏郎に、技術的なことや心構えについて様々な指導を受けてきました。
今回の初入選を励みに、より一層技術の錬磨、研鑚に努めていきたいと思います。
 
 
 
 

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初入選

こぎん刺し帯「石畳」成田 秀子
(染織)

伝統工芸、民芸、手芸、ちょっと格式が高いかなぁと、思いつつ初めてチャレンジしました。
届いた知らせにびっくり、嬉しさでいっぱいです。
弘前での出会いの一つ「こぎん刺し」青森の伝統的な手仕事、日常に使いたい物、飾りたい物を中心に、さまざまな物を作って来ました。
素材はいたってシンプルです。市内の手芸店にて、買い求めた麻布、綿糸、ぬい針、いつでも手に入ります。後は一針一針の手作業。
帯に仕立て上げてくださったN氏に感謝です。
そして、高級感あふれる素材と行程から生み出される作品部門への挑戦は、そのような展示作品の中で、どのような、表情をしているのでしょうか。
鑑賞出来るのを楽しみにしております。
 
 
 

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初入選

乾漆黒漆鉢 大橋 雄
(漆芸)

この度、日本伝統工芸展に初めて入選をさせていただき誠に有難うございます。今回の作品による入選は、私にとって大きな励みと刺激となり、今後の成長を促してくれる契機となればと思っています。
長い間ずっと自分なりに追求してきた乾漆技法による制作は、試行錯誤の繰り返しでした。この作品は乾漆の素地で、近年来取り組んでいる黒呂色仕上げ(呂色磨き)の作品です。「黒呂色塗」と「乾漆による造形」とのマッチングで、素材の特徴が生かされ、美しい作品が出来ないものかと考えていました。
乾漆の造形の点では、放射状に緩やかに回転するような曲線のイメージで鉢を作りました。漆黒の肌の質感と、曲線を組み合わせた造形が生み出す光の反射が美しく共鳴してくれればと思っています。
今後ともチャレンジ精神は忘れず、努力してゆきたいと思っています。

 
 
 

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初入選

乾漆透飾盤「百」 川ノ上 拓馬
(漆芸)

この作品は「乾漆」という、麻布を積層させて造形する技法で制作しています。
また、透かしの部分は、糸鋸でひとつひとつ切り透かし成形しました。
昨年大学を修了し、その後自宅にアトリエを構え、孤独に制作するようになったことが転機となり、今まで主としていた、蒔絵、螺鈿などの加飾を一旦封印し、図尾計を追求した盤や皿を、多く制作するようになりました。
テーマやモチーフを決めず、どのような構造で透かしを入れると美しく見えるか、綺麗な影が展示台に映るだろうか、ということを考え制作しています。
タイトルの乾漆透飾盤「百」は、100枚切り透かしたことが由来となっています。
ご覧いただく際はあまり深く考えず、シンプルに造形や光影、漆の魅力を感じながらご高覧頂ければ幸いです。
昨年大学を修了し、その後自宅にアトリエを構え、孤独に制作するようになったことが転機となり、 今まで主としていた、蒔絵、螺鈿などの装飾を一旦封印し、造形を追求した盤や皿を、多く制作するようになりました。
テーマやモチーフを決めず、どのような構造で透かしを入れると美しく見えるか、綺麗な影が展示台に映るだろうか、ということを考え制作しています。

 
 
 

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初入選

花籃「天蚕」 髙木 政美
(木竹)

ふっくらとした形をイメージした作品に仕上げました。前と裏は、同じ模様の網代編みです。底面にくぼみをつけてやわらかさを表現しました。側面は、下部を網代編み、上部は櫛目編みです。櫛目編みに煤竹を使っています。櫛目の幅に違いをつけて変化をつけました。又、下部の網代から上部の櫛目へと変える位置決めに気を使いました。煤竹は力強さがありますが、あつかい方は難しいです。仕上げは拭漆で仕上げてあります。

 
 
 

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初入選

槐小箱 水野 咲衣花
(木竹)

材木屋さんで槐の良材を見つけ、素敵だなと思いましたので、箱を作りました。 蓋の下、黒柿の部分にはアワビ貝を象嵌し、蓋をあけると中は3段になっています。 槐の魅力を消してしまわないよう、気をつけて、形や塗装方法を自分なりに考え制作しました。

 
 
 

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初入選

木芯桐塑布貼彩色「大丈夫」 岩﨑 久美子
(人形)

 
振り返ると人生は綱渡りの連続のようです。困難な状況に立たされた時に心の奥底から「大丈夫」という声が聞こえてきて、一歩一歩前に進む事ができました。それを人形にしてみました。奈良国立博物館で昨年開催された「特別展 快慶」を鑑賞し美しい仏に魅了されました。特に金泥の上に施された金箔の截金は800年の時を経て、渋さと儚さを内包させながら確かな輝きを放っていました。それに感化されて胡粉(地塗・仕上)、彩色後、衣装部分を銀泥を塗った後に銀・金箔砂子を撒いてみました。作業中、マットな質感の泥に細かい砂子がキラキラ輝くのを目にして、今年の冬マイナス18℃の凍える寒さの中で感動した雪のプリズムが蘇ってきました。一面銀世界の森で太陽の光が反射して光の粒子が浮き上がる美しい光景です。記憶の中に織り込まれた自然の美を無意識に再現しようとしていた事に気付き、創作する事の醍醐味を味わう事ができました。

 
 
 

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