東京都知事賞

色絵銀漆彩陶筥「ゆかし」若林和恵(陶芸)

 

この度は東京都知事賞を戴き、大変嬉しく光栄に思っております。これまでお力添えくださった皆様に深く感謝申し上げます。
東北震災、そしてコロナ禍以降、予測できない不安感や内省する時間が増え、そこに生じた心情を委ねる処として「筥」に現しました。ろくろ成形した磁器に絵付けを施し、自身の無意識の葛藤の如く埋め尽くすように銀箔を重ねる工程は「混沌とした内面を覆い被しつつ、新たな小宇宙を構築する」という相反する要素の共存を望む行為でもあります。希望と絶望の両方を抱えながら「何かが生まれる予感」「未だ視えざるものとの出会い」への期待を込め、作品名を『ゆかし』(古語で心が惹かれる、見たい、知りたい、の意)としました。仕上げに漆を塗布し、銀彩の色を留め、奥行きを出す効果を試みながら、その世界にまた新たな表情を見つけていく所存です。「銀漆彩」(銀、漆、色彩)の重層に、ひととき心を委ねていただければ幸いです。
 


朝日新聞社賞

木芯桐塑布紙貼「木の芽起こし」原山 桂子(人形)

 

今回、この様な大きな賞を頂いて、驚いております。ありがとうございました。
私の作る物は、いつも小さいと言われていて、それが、しゃがみ込んでいるという事で、入選すら無いかもと、心配していました。今回の事で、好きな作品を、好きなスタイルでという事を、ちゃんと認めていただいた様な気がして、しみじみ嬉しい思いです。
先輩方、人形部会の皆様、諸先生方に、厚くお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。


日本工芸会賞

 硝子花器 彩の記憶「刻の航路」大槻洋介(諸工芸)             

この度は日本工芸会賞を頂き、ありがとうございます。
一昨年の奨励賞に続いての受賞を心から嬉しく思います。
「刻の航路」
流れゆく時間を形で表現することは難しい。記憶の中にある、工芸家を志した時期時間の経過一隻の舟のように流れていた感覚が残っており、それを表現いたしました。
大海原を渡る波と風。突き進む心。
これからも、技術の研鑽と表現の可能性を追求して行きたいと思います。
ありがとうございました。


三越伊勢丹賞

煤竹花籃「汀武関翠篁(木竹工)

 

久しぶりの受賞、嬉しく思います。
今回の作品は、砂浜に寄せては引く波の様子を表現しました。
正面は縦に細く割ったひごを並べ、奥のひごが透けると動的な視覚効果が生まれるように制作しました。アクセントとなる曲線には、囲炉裏や竈の煙で約200年燻された、煤竹という茶褐色の竹を使用しています。
側面にも煤竹を用い、底から左右に包み込むように形作りました。
潮騒を感じていただければと思います。


川徳賞

朱銅花器「郷」庄司 逸雄(金工)       

 

この度は栄誉ある賞を頂戴し、誠に光栄に思います。このような賞を頂いたこと今後の物作りの励みになり、嬉しい気持ちでいっぱいです。周りの皆様に感謝申し上げます。
私は山々に囲まれた自然豊かな山形で生まれ育ちました。東西南北どちらを向いても山並が見え四季折々の姿を見せてくれます。
今回の作品はそんな山の稜線が形作りのヒントをあたえてくれました。山形の地は鋳物の産地で長い歴史があります。代々受け継がれ伝承された技術と新たな技法を用いて制作致しました。金属は硬いイメージのある材料ですが、その特性を活かし力強さ、鋭さを感じられる部分と真逆の張りつめたふくよかさが感じられる部分、硬軟持ち合わせた作品に仕上がったと思います。これからも精進して参りたいと思います。


アサヒグループ財団賞

紬織着尺「凜として」鈴木 ゆき子(染織)    
        

このたびはアサヒグループ財団賞を頂戴し誠にありがとうございました。ご指導いただいた先生方、支えてくださった皆様に心より御礼申し上げます。
今までは着物の作品で応募をしてきましたが今回初めて着尺で応募しました。小さい単位のモチーフが面白く感じられるように経絣に六色を使い強弱を入れるなどを工夫しました。作品として成立しているのか不安が多かった挑戦でしたが、賞を頂いたことで次への励みになりました。
このような名誉ある賞を頂き大変嬉しく、それと同時にこれからも一層努力していかなければと思っております。今後ともご指導を頂きますようお願いいたします。
ありがとうございました。


日本工芸会東日本支部長賞

乾漆切絵盆「クリスマスローズ」根本 曠子(漆芸)          

気が付けば出品歴も六十年を重ね、この度は六回目の賞をいただき、喜びひとしおです。
初出品は20代でしたが、当時大学で漆芸を広く浅く学んだだけで、これといった技術が身についたわけではなく、紙ならば安価で気軽に扱える素材でした。エスキースの折、乾漆本体(蓋)に切り抜いた文様を置いてみたのが始まりでした。苦肉の策から施行錯誤をくり返すうちに、典具帖に糊漆を引いて型紙を作り、切り透かして貼った上に、すり漆をくり返しながら、金粉や顔料をすり込んで行く技法にたどり着きました。今後も手探りの試みを楽しみながら続けていくつもりです。
クリスマスローズは隣家の垣根の下から越境して、数年前から毎年春先になると可憐な花が咲き、葉の形も面白く、モチーフになりました。つくり始めた頃は蕾が多かったものの、いつの間にかあちこちに花がいっぱいになり、次の作品につなげて行く事としました。


奨励賞

染付蝶文陶筥 林 武宏(陶芸)  
          

この度は第65回東日本伝統工芸展、奨励賞を承り、大変光栄に感じております。奇しくも受賞の報告を受けた日が、15年目の結婚記念日にあたり、両親、家族と供にささやかな会食をしている最中でした。受賞報告後は一転祝賀会の様相になり、自分の人生で、こんな映画の脚本のようなことが起こるのかと、信じられない思いでした。
作品は、イッチンと染付を施した磁器の蓋物です。ロクロ成形後、削り、イッチンで骨描き、素焼き後に染付の濃み、施釉をして本焼きです。製作する際に心がけていることが何点かあります。バランスのとれたアンバランス、シンメトリーとアシンメトリーの混在、現代性と余白を描く構図、絵付けのキャンバスにしないような、形との親和性、等です。
道半ばで未熟な部分も多々ありますが、少しでも品格のある作品をつくりたい思い、これからも製作に励んでいきたいと思います。ありがとうございました。


奨励賞

友禅訪問着「深山」遠峰聖明(染織)     

 

この度は奨励賞をいただき誠にありがとうございます。これまで激励、後押し頂いた諸先輩の方々、周りの皆様に支えられて今回の受賞につながりました。心よりお礼申し上げます。
工芸展に出品するようになり、今回出品した「深山」ユキノシタ科の中の大文字草は、私が二十代のころ、ある渓谷に可憐に咲いていた花を糸目友禅で制作して来まして今回の受賞に至りました。これからも試行錯誤しながら作品づくりに努力していきたいと思います。


奨励賞

 「巻胎煙草塗の器」 木村正人(木竹工)    
  

この度は思いがけず賞をいただき誠にありがとうございました。驚きとともに大変嬉しく思っております。
この作品は薄くテープ状にしたブナの板を螺旋状に巻き上げて造形し堅下地をしました。内側の底は刻みタバコを利用して変わり塗りを施しております。水の色は微妙に色を変えて塗り重ねて層を作りました。また外側にも模様をつけようかと迷いましたが、変わり塗りの内側が生きるようあえて輝く黒にして水の波紋をイメージし表現してみました。
賞をいただけたことに感謝申し上げますとともに、これを励みに制作に日々努めて参りたいと思います。ありがとうございました。


奨励賞

四分一接合箱「晶」長井 未来(金工)     

 

この度は奨励賞をいただきまして誠にありがとうございました。これまでご指導いただきました先生方、そして制作活動を支えてくださった皆様に感謝申し上げます。
今回、私は鉱物をイメージした箱作品を制作しました。鉱物の持つ結晶構造や色調を色金のコントラストによって表現しています。用いた色金は四分一(しぶいち)と呼ばれるグレートーンが特徴の銅合金で、銀と銅の含有率によって異なる濃淡を見せます。濃淡の異なる四分一同士を組み合わせることによって、グラデーションや深みのあるコントラストを作り出すことができます。
私は、無彩色でありながらも多彩な表情を見せる四分一に魅力を感じ、その独特な色合いを作品にどう活かすことができるかを考え制作しています。
金属素材の魅力や奥深さを伝えられるような作品を目指して、これからも精進してまいります。


奨励賞

透網代合子「moriyama」田中茂樹(木竹工)
       

私は東京杉並で明治40年から続く家業の籠屋に従事し、24年間籠作りをしてきました。今回伝統工芸展の出品は初めてになりますが、入選並びに奨励賞を頂き、今は亡き祖父母に良い報告ができました事、大変嬉しく思っております。
2022年に東京から山梨県北杜市の山の裾野に工房兼店舗を移転しました。制作環境が
大きく変わり、自然と向き合う時間も増えて、
工房から見える景色や自然の音に日々感動しています。この作品は冬の森と、奥に広がる山々を感じ表現した物になります。透かし網代を絞り込む技法で印籠蓋仕様にし、落ち着いた灰色で仕上げました。透かし部分は冬木を、合子を山として見立てています。
今回の入選を期に今後も挑戦する場として伝統工芸展に出品できる様、日々精進して参ります。


奨励賞

木芯桐塑布紙貼「回想」 内田 陽(人形)

 

この度は奨励賞を頂き、本当にありがとうございました。
長く長く人形を作る事を続けてまいりましたが、迷うことばかりでした。迷いつつも自分の伝えたい事が形になって行く事が嬉しくここまでまいりました。
今回の作品「回想」は来し方を想い感慨にふけっている様を表現しようとしたものです。桐の木を彫り、桐塑で整え、胡粉を塗り、思いを表す金の小さな丸玉を置き、その上から異なる三色の箔を貼った布を貼り、全体に撤塗で彩色し、最後に砂子をかけました。
作品を見てくださった皆様が思いを少しでも感じて頂けたら幸せです。賞を頂けました事、大変な励みとなり、今後も心を込めて作り続けたいと思います。有難うございました。


奨励賞

有線七宝蓋物「波間に」 森永恵子(諸工芸)

入選にホッとしたのと同時に奨励賞まで頂き驚きと嬉しさでいっぱいです。今回は今までの作品と違い、デザイン的な要素が大きく、自分でも自信のない不安な気持ちの作品でした。
ふるさとの海をモチーフとし、刻一刻と交わる日本海の透きとおる青さ、深さ等を表現してみました。又今回初めての試みとして、異素材の純銀のペーストを使ってみました。焼成時の収縮率の違いから隙間が何回も出来それを埋める作業に追われる事になりました。
作品の制作にあたり問題は山積みで失敗の連続で納得のいくものではありませんが次へのステップにしていきたいと思っております。これまでご指導頂きました先生、支えて下さった皆様に感謝と共に一層精進して参りたいと思っております。